平成29年度 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会奨励賞講評

平成30518

 

平成29年度 空気調和・衛生工学会近畿支部学術研究発表会奨励賞講評

 

学術研究発表部門:5編

 

A-13 水冷媒放射空調システム用パネルの性能評価手法に関する研究(その4)CFD解析を用いた各種放射パネル性能の評価

○竹内慎(大阪大学),山中俊夫(大阪大学),甲谷寿史(大阪大学),松崎眞子(大阪大学),

 氏原正志(ササクラ)

審査評:本論文は、水冷媒式放射空調システム用パネルについて、パネルからの放熱量を放射・対流成分に分離することで、パネル形状の違いによる放熱特性を検証している。実験の他、CFD解析により詳細な検討を実施し、実験と解析で一致した対流・放射・天井裏側放熱成分の比率を導出し、室内環境に与える影響を示している。新規性のあるテーマ、手法ではないものの、具体性のある対象と結論により学術貢献、工学応用性が高く、またプレゼンテーションや質疑応答によるアピール力も高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-14 テキスタイルダクトと放射天井による対流・放射併用型空調に関する研究(その3)CFD解析によるテキスタイルダクト単体使用時の室内空気質・温熱環境評価

○鈴木克治(大阪大学),桃井良尚(福井大学),山中俊夫(大阪大学),甲谷寿史(大阪大学)

審査評:本論文は、大風量・低風速で送風しドラフト感を軽減するテキスタイルダクトについて、低Re数型CFD解析により空気質・温熱環境を評価し、混合換気と比較しながら空気質指標結果をAr数で整理している。手法そのものの新規性はないものの、結果の精度を確認した上で、無次元数を使っての分析が実施されている。具体性のある対象と結論は学術貢献工学応用性が高く、またプレゼンテーションや質疑応答によるアピール力も高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-46 折板状反射体の日射反射性能に関する研究,折板形状による反射率の異方性発現効果

○永目享大(大阪市立大学),西岡真稔(大阪市立大学),鍋島美奈子(大阪市立大学)

審査評:本論文では、折板状反射体の2つの反射面にそれぞれ反射性能の異なる反射材を設置することで、太陽高度の変化に対する、半球反射率の異方性を発現させる効果が、数値シミュレーションにより評価された。季節による太陽高度に応じた反射率の変化が算出され、反射日射が周辺建物や地表面に与える影響とともに、冬季の日射吸収率の増加効果も評価され、学術貢献性、工学応用性の極めて高い内容であると判定された。またプレゼンテーションによるアピール力も高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-53 時変動するエアコン吹出し気流のCFD解析手法に関する研究(その2)定常CFD解析による時変動吹出し気流の再現手法に関する検討

○中井奈保子(大阪大学),甲谷寿史(大阪大学),山中俊夫(大阪大学),安田智一(大阪大学)

審査評:本論文は、二方向吹出しパッケージエアコンを吹出し方向スウィングモードで運転する際に生じる時変動気流の時間平均値を定常解析により近似する課題に取り組み、定常解析時の吹出口の開口面積と乱流統計量を調整する手法により非定常解析値との整合を図る手法を検討している。本論文の結論は、この手法の検討に着手した段階に留まるが、CFD解析における時変動気流計算を簡易化するテーマは新規性が高く、その有用性も示唆されておりアピール力も高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。

 

A-61 水質モデルを用いた加古川流域から播磨灘への窒素流出解析

○森正憲(大阪大学),古賀佑太郎(兵庫県環境研究センター),嶋寺光(大阪大学),

 松尾智仁(大阪大学),近藤明(大阪大学)

審査評:本論文は、長期栄養塩流出解析の基礎研究として、水文・水質モデルを構築し、加古川流域を対象として流量、総窒素濃度、ならびに総窒素(TN)の流出解析を行っている。構築したモデルの概要、実測値との比較による再現性の評価と精度分析、モデルに基づく総窒素負荷の発生源別の寄与率評価について、論文・発表のいずれにおいて丁寧に表現できており、新規性、アピール力が高く評価されたことから奨励賞に値する論文と判定した。

 

技術報告発表部門:2編

 

D-2 設計施工一貫におけるBIMの取組み事例

○栗原玄太(鹿島建設),堀江宏(鹿島建設),加藤誠(鹿島建設)

審査評:本技術報告は、大型複合建築において設計施工一貫でのBIMの取組み事例の報告である。基本設計段階から建物全体について3D-BIMによる設計を行い、各部の建築・構造との取り合い調整、サブシャフトのユニット化デジタルモックアップ、気流解析、総合BIMプロット図、搬出入計画など検討に用いている。また施工中のAR/VR技術の活用、竣工後のFM連携やIoT技術によるビックデータ活用なども視野に入れている。基本設計から施工、運用段階までのフルBIM活用は非常に先進的であり、奨励賞に値する技術報告と判定した。

 

D-4 サステナブル建築物への取り組み(計画・設計)

○名倉宏明(大林組),西脇里志(大林組),井守紀昭(大林組)

審査評:本技術報告は大型超高層建物におけるサステナブル建築物への取り組みに関するものである。頭涼足温空調や運送促進セキュリティシステムなど人の生理的な感覚や健康志向を生かした省エネルギーシステムや立地を活かした既存施設との熱融通システム、BCP対策に配慮したハイブリッド非常用電源システムなどの新技術に積極的に取り組んでいる。これらの取り組みは新たな建築設備技術の発展に寄与するものであり、奨励賞に値する技術報告と判定した。


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